骨格標本を作る
骨格標本の作成過程には大きく分けて
1、採集、外部形態計測
2、解剖
3、煮込
4、洗浄
5、乾燥
6、袋詰、ラベリング
の6工程があります。
特に大切なのは1と6と考えます。
『生』状態のデータを採れるのは解剖するまで。
ここでのデータが後でとても貴重になります。
あと、6のラベリングも重要です。
ラベルのない標本など、ゴミに近い存在になってしまいます。
『骨は折ってもラベルはなくすな』
それくらいラベルは大切です。
0、道具
まずは道具を準備します。
道具を並べるとざっとこんな感じ。
これではわけがわからないので・・・
|
計測道具系
電子天秤と定規、ノギスです。
計測データは一冊のノートにまとめておくと
紛失しにくいと思います。
|
|
解剖道具系
まずはゴム手袋。
死体を扱うので、これ必須です。
まじばっちい。
後はピンセットとか、ハサミとか、
メスとか、包丁とか。
|
|
煮込道具系
印画紙と油性マジックで
ラベルを作って鍋に投入します。
入れておかないと
何がなんだかわからなくなります。
小さい生物はお茶パックに入れて煮込みます。
大きなものは三角コーナー用のネットや
玉ネギ袋に入れます。
他にハリガネとかあると便利です。
|
|
洗浄道具系
バケツと歯ブラシ、ピンセット。
ぶっちゃけ道具はテキトーでよいので
写真もテキトー。
先の細長いピンセットが便利かな。
|
1、採集、外部形態計測
轢死タヌキ
採集!これが一番大変!
ほとんどラッキー頼りです。
こうやって写真も撮っておくと、
種を誤同定しても後で気がつけるので安心です。
写真はマメに撮るべし。
哺乳類になれていない頃に
タヌキと思って作った標本が、
あとで写真を見たらアライグマだったりします。
写真がなかったら危ないところでした。
計測部位は哺乳類、鳥類で異なり、
ややこしいので本項では割愛。
趣味でやる分には体重と全長があればいいんじゃね?
哺乳類だと尾長、耳長、後足長とか。
2、解剖
は〜い、ざっくざっく!
切らなくてはならない部位は限られていて、
慣れるとメス1本がニワトリ4羽くらいまで持つ。
もっと慣れたらメス1本でニワトリ8羽はいけた。
腱しか切らなくなるので、
刃の劣化をとても遅くできます。
切り開いた部位と腱をつなげば、
解剖前の状態に戻せます。
慣れないうちは胴体と左右の手足を切り離して扱うと、
後でワケワカメにならずにすむ。
左右手足は分けるべし。
左
右
解剖したときに可能な限り筋肉を切り取っておくと、
後の展開が楽になります。
哺乳類だと手足左右で4分割しないと識別不能になるけど、
鳥だったら左右の2分割しておけば、
手足については識別可能です。
3、煮込
左右手足、胴体を別々に網袋に入れ、鍋に放り込みます。
印画紙に油性マジックで書いたラベルを忘れずに。
↓こんな感じの電気鍋で煮るのがベターです。
電気鍋
長時間沸騰させると骨が破損してしまうので
だいたい60℃〜80℃程度で煮込む人が多いようです。
ネギや生姜を入れるとよりおいしく煮込むことができます。
ニワトリだと多少沸騰させても平気だったり。
時間は季節、鍋の個体差によって大きく変わります。
BUNの場合、真夏で20時間前後。
マメに様子を見ながら煮るのがコツ。
骨に油が残った場合は、
軽く再煮込か、しばらく水漬けで。
軽く煮た時点で
椎骨(いわゆる背骨)に針金を通しておくと
椎骨の順番がわからなくならない。
バラけても根性で並べ直せなくもないです。
煮込んだ臭いが良いものは、食べてもおいしい。
ネコを煮込むと良いにおいが・・・・・・ということは・・・。
ネギや生姜を入れr
熱でなく薬品で溶かす作戦もあります。
細かいものをやるときは
ポリデントとかの弱いタンパク質分解酵素入り洗浄剤を。
デカブツを溶かすときはパイプマンのような強力洗浄剤を。
ワイドハイターのような漂白剤系も有効ですが・・・
強力なのを使いすぎると
骨にダメージを与えるので注意が必要。
煮込と併用する人が多い感じです。
さらに、虫に食わせる方法があります。
腐らせ気味になるので全般に臭いです。
特にウジ使ったときが・・・。
ウジムシ活動中
でもウジに食わせるのが一番綺麗に出来上がります。
肉はともかく、なぜか油まで消える不思議。
ウジを放置しすぎると大変なことが起きますが、
それでもこの手は魅力的。
カツオブシムシ、ミルワームに食べさせても良いです。
骨と腱だけを残してきれ〜にしてくれる優れもの。
虫作戦は全般に時間がかかるのが難点かなぁ。
脂抜きにベンゼンを使うこともあるらしいですが、
薬品嫌いなので却下。
家庭用品だけで作るのがモットー。
煮方では、人それぞれ独自の流派(?)を編み出しており、
どれが正しいというわけでもないです。
ただ、経験がものをいう世界なので
なかなか上手くいかないのは確かです。
4、洗浄
地道に歯ブラシでこすります。
ここは捻りようがない。
煮込が上手くいっていると歯ブラシいらないです。
『骨は水に沈むが、肉は浮かぶ』という性質を利用すると
アレコレ便利だったり。
オキシドールに骨を漬けると
不気味なほど真っ白になります・・・が、
骨表面を溶かしているため、あまり好きじゃないです。
クリーム色の骨が好き。
5、乾燥
乾燥中
気候のいい時期でも2週間は乾かさないと
完全には水分が抜けません。
水っぽいまま袋に詰めるとカビます。
6、袋詰、ラベリング
袋詰完了
BUNの場合、ラベルには最低限、
・標本番号
・種
・性別
・拾った場所
・拾った年月日
・拾った人
を記入します。
これだけあればとりあえず利用可能。
もっとマメな人はもっといろいろ書いていたり。
性格が出ますな。
もろもろの計測値などは
パソコン内の台帳へ打ち込んでいます。
こっちは最悪データが飛んでも致命傷にはならないので。
これでやっとここさ骨格標本完成です。
モノにもよりますが最短で2日。
質を重視するならば
1ヶ月程度かけてじっくりやったほうが良いです。
焦って作るとろくなことがない。
|